2018.7.7 パシフィコ横浜 第一幕 【Plastic】things/1999-2006 感想
Plastic Tree全14アルバムリクエスト公演通称プラフィコに行ってきました。
一応この日のライブの趣旨を念のため…
Plastic Treeパシフィコ横浜国立大ホール"全14アルバムリクエスト”公演2018
メジャーデビュー21年目を迎えたPlastic Treeがこれまでリリースした14アルバムの中から、前半1997-2006、後半2007-2018に分け、ファン投票で1位に選ばれたアルバムを衣装やアー写イメージを含めてフル再現。
今年は昨年の20周年"樹念”公演に引き続き2回目。
すごい。
まだ夢の中にいるみたいな、横浜に体半分を置いてきた気分が残っているうちに感想を書こうと思います。
曲の感想やMCの内容はざっくりニュアンスです。
第一幕 【Plastic】things/1997-2006 トロイメライ
セットリスト
EN.(2位:CELL)
- cell
- メランコリック
- crackpot
- ダンスマカブラ
- うわのそら
- 夢の島
開場前
12時くらいに会場に着いたら、ロビーのところに人が溢れていて物販が混雑しているのかと一瞬思いました。
ら、直前になって発表されたガチャとクレーンの列だったらしく。壁や仕切りに沿ってずらっと大勢が2列になって並んでいて、スタッフさんが誘導していたけどがそれでも少し混乱していたかもしれない。
肝心の物販はそれほど行列もできていなかったため、ひとまずパンフとTシャツは購入する。グッズは全体的に白黒シルバー水色とかなり爽やかで夏っぽいです。そしてなにより
…今回のアー写、再現率ものすごく高いのでは?
メンバーさんの衣装も含め、トロイメライは当時の雰囲気とか質感が全面に出ている感じがしてすごくよかった。doorAdoreは直近のものなのに正統進化していて。そういえば会場には有村貴婦人のコスプレをされている方がちらほらいて、それがすごく素敵でした。
ガチャは早々に諦めて(並ぶ根性がない)同行の妹とそれぞれの推し*1へ突貫でレッドブルと煙草を購入したり*2缶ビール片手に海岸をうろついているうちに開場時間が近づいたためホールの入口に向かいました。
あの…どう見ても30分で捌ける群衆じゃなさそうなんですけど…
どうにか入場して着席した時点で開演時間である14時直前。席はまだ7割くらいしか埋まっていない。
今回の席は超下手の30列台後半。春ツアーはライブハウスだったこともあってかなり近くで見られたため、思いのほか遠くてちょっとしょんぼり。
しかし外にはまだまだ人がいたよなと思いつつ、結局それから開演まで20分以上押すことに。
やっぱりね!
本編
トロイメライのSEが流れるなか、幕の向こう側から照らされたライトでメンバーのシルエットが投影される。
SEはフェードアウトせずに「理科室」に。
続く「グライダー」も併せて聞きながら、この辺りのアルバムから急に音が低くなるし厚みが出ているなあと思いました。
転換で、幕に早回しの「蒼い鳥」のMVが。たしかこのMVはメンバーが倍速で動いて、通常テンポに戻すと周りの大道芸人がスローで動いているように見える、みたいな撮り方をしていたような覚えがあるのですが、どうだったんだろう。パレードの頃の地続きのような、少し違う雰囲気があるような不思議なMVでした。
「蒼い鳥」は最近ライブでよく聞くアレンジだったと。ちょっとギターが違ったような気もしますがわかりません。
ライブで聞くこの曲はCメロから最後のサビにいくときの、竜太朗さんが息を吸う音と無音の緊張感がすごく好きです。全部振り切って、出し切ろうとするように聞こえる感じ。
「散リユク僕ラ」もシングルなので同じ演出。このMVの後に今回の公演名が出てきて、前奏でそれまで下がっていた幕が勢いよく落ちる。
この演出が曲の雰囲気に合っていて会場が一気に温まったように感じました。
「ペットショップ」は歪みきった轟音で、ひたすら重くて暗い。CDだとよく分かっていなかったんですが、ベースだと思っていた音がどうやらギターの音だったようで、そういうのが分かるのもライブのいいところだと思います(そしてこの曲以外にもちょいちょいそういう勘違いがこの日にぽろぽろ発覚して、改めて自分の耳のセンスのなさを確信しました)
ちょっと歌が怪しいのでは…?そういえばこの曲って最後にやったのはいつかしら…?とはらはらしつつ、次曲「懺悔は浴室で」
無機質な同期からの水音みたいなギター、赤と白のレーザーで一気に会場が異空間に。
サウンド自体はペットショップと同じかそれ以上に暗くて重いし、歌詞も陰鬱なのにダンスミュージック。
本編はMCなしなので今回はなかったですが、そういえばいつもはこの曲の入りで竜太朗さんが「踊りましょう」と言っていたような気がします。
これがプラ的ダンスミュージック…やっぱり変なバンドだな…(好きです)
フロント3人もステージを動き回るし、音がぐるぐるしている(語彙)(ループ感?)し、やっぱり踊る曲なんだろうなと実感す。
アキラさんのギターがいかにも「俺が! ギター!! 弾いてます!!!」という感じで素敵です。
不協和音一歩手前のようなギターとピアノ、正さんの幻覚みたいな歌詞が印象的な「赤い靴」と浮遊感が気持ちいい「ガーベラ」に浸っているうちに
「千葉市、若葉区、6時30分。」のガレキを叩くような音(生音っぽく聞こえたけどあれ、何叩いてるんだろう)からドラムのイントロへ。
スクリーンに高速で流れるモノクロの風景とゴシック体の武骨なタイトル。拡声器を片手に投げやりに歌う竜太朗さんと轟音の楽器隊。
竜太朗さんが拡声器を投げ捨てて演奏が終わっても会場が割れるほどのコールで盛り上がるくらい、演出を含めた全部がトータルで格好よかったです。
そしてその盛り上がりとは対照的なテンションでアキラさんが「やるよ」と呟いてから「プラットホーム」のイントロを弾きはじめる。
千葉市~が地上ならプラットホームは海の中のような地下鉄で、そこをひた走っているような疾走感のある演奏からの「Hello」
全体的にハードだったり尖っていたりする曲が多いので、音が優しくシンプルな(に聞こえる)演奏にすごく癒されました。
歪むギターの低音とベースが境目なく混じったイントロの「雨ニ唄エバ」
去年の秋ツアーでも演奏されていたこの曲ですが、今回は細かいレーザーがステージや同タイトルの映画みたいにステージ上を踊る竜太朗さんの黒い傘に投影されていて、それが本当に雨が降っているように見えて綺麗でした。
アンコール
メンバーがTシャツに着替えて出て来て「cell」へ。
ところで一幕のアンコール、MC始まりだったか曲始まりだったか曖昧なんですね…すみません…
改めてライブで「cell」を聞いて思うのは、やっぱりこの曲は変な曲だなぁ、と(誉めてます)
CDでも、ライブでも、この曲の作り方というか構成が全く掴めない。「土に埋まっていた完璧なオーパーツをちょっくら掘り出して来ましたよ」的な、少し奇形じみた完璧さを感じる曲です。ライブでは音源よりも有機的で音の緩急が畳み掛けてくる心地よさがありました。特にドラムが好きなんですね。かっこいい。
アルバム『Cell』は私が生まれて初めてライブというものに行ったアルバムなので、それがアンコールの形でも大きな会場で聞けて嬉しかったです。
ここからはMC解禁とのことで、ざっくりニュアンスですがMCを。
竜太朗さんのようやく名前が言えます、の一言からゆるくMCタイム。
竜「MCがないのは全曲再現だからで、不機嫌なわけではないです。なんならご機嫌です。次点のアルバムcellからメンバーが選んだものを…ほとんど正君が選んだんですけど」
一幕の竜太朗さんは昔懐かしの金髪だったのですが(しかしびっくりするくらい当時と変わらないな、あの人)地毛をyoutubeで調べてワックスで金髪に染めたところほとんど変わらなかったのでウイッグを被っていたそう。
竜「次の曲は何だと思いますか?」(例のギターを装備して)
海「メランコリック!」
竜「よく分かりましたね。あなたに幸あれ」
明「(そろそろ)やってもいいのかい?」
と尋ねつつアキラさんが弾き始めたギターのイントロと、竜太朗さんの「あれですか?」という言葉とがってしまい…気が合ってるんだか合ってないんだかわからん人たちだな~(好き)
「メランコリック」は流石にメンバーもファンもド鉄板なだけあって盛り上がる。私もある意味一番テンションが上がったのはこの曲でした。もうね、体が覚えてるんですね。
次は個人的に超久々の「crackpot」。めっちゃコーラスしてましたね、アキラさん。なんとなくアキラさんのコーラスってレア感があって聞くと嬉しくなる(あと声が素直にかっこいい)のですが、この曲はコーラスというかツインボーカルというか。
正「パシフィコ―!」
海「イエーイ!」
の掛け合いがありつつの正さんMC
正「トロイメライは予想していましたけど、cellはね…」
と感慨深そう(?)な一言を。予想外だったんですかね?
ナイスボイスが掠れ気味でちょっとお疲れかな? と心配になりました(まだ一幕なんすよ…)
そして「赤い靴もペットショップもすごく久しぶりだから聞けた人はラッキーですね」的な一言に(ああああやっぱりそうだったんですね!)とあの危なっかしさ緊張感に納得する。
正「お天気はどうですか?」海月「くもりー」「晴れー」のやりとりから竜太朗さんとお天気の話に。
竜「西日本が大変で」
正「来たくても来られなかった人も沢山いるでしょう」
竜「雨の野郎め…」
正「なんでこっちを見るんですか」
注)
この日は西日本が記録的な豪雨で会場にたどり着けなかった方もかなり多かったようで。
私自身、住んでいる場所がもろ被災地ど真ん中でして*3たまたま前乗りしていたため(それでもかなりギリギリセーフでしたが)ライブに参加できましたが、この時はそれほど被害が大きいなど知る由もありませんでした。
Twitterや地元の人からの報告くらいからしか、本当にこちらには情報が入ってこなかったです。
正さんがステージに向けて両手を伸ばして(?)「この光景がその人たち(来られなかった人たち)に届け」と念を送って「ダンスマカブラ」「うわのそら」
正さん詞曲2連発です。
タイプが全然違うのに、どちらもいかにも正さんらしい曲で。
アキラさんはめちゃくちゃギター弾きまくって上手を煽っていました。
ダンスマカブラのベースは聞いて楽しい、見て楽しいアグレッシブなベースです。ゴリゴリの正海月の身としてはライブハウスの下手正さん最前ドセンで暴れたい一曲。
思い起こすこと14年前、初めて参加したライブは前から2列目の良位置にも拘らず楽しみ方がよく分からず最初はずっと戸惑っていました。その時、この曲でぐるぐる踊る最前のお姉さんたちと、ニコニコ微笑みつつ跳ねながらあの激しいベースを弾きまくる正さんの姿を見て「ああ、ライブってこんな感じで自由に楽しんだらいいのか」と悟ったものでした。
ステージ上で笑顔が素敵な永遠のパンクお兄さんがベース抱えて跳ねる下手、おすすめです。
竜太朗さんの「何かないですか?」の問いかけからこの日初めてのケンケンさんのMC
ケン「トロイメライをやるってのも楽しみでしたけど、ここでみんなと会うのが楽しみでした」
ケン「(トロイメライを作って)こん人達(フロント3人)は偉い! 隆さん、ササブチさん、やりました!」
ああああケンケンさん! やっぱりこの人、いいな…好きだな…
と、ここで「水を差すようだけど」とアキラさん。「ぶっちはいたけどトロイメライは実質ここの3人(正、明、竜太朗)で作ったから」
そういえばそうでしたね。ササブチさんはドラムを叩いたものの、大筋の形はほとんど3人で完成させていたそうです。*4
散リユク僕ラは隆さん、蒼い鳥のときはドラムチューナーの的場さんと実質この時期は3人のドラマーさんが関わっていたそうで、そのためアキラさん曰く「今回一番偉いのは(3人憑依させた)ケンケンです」とのこと。
トロイメライはプラの長い歴史の中でもかなり波乱万丈の時期*5に作られたアルバムで、だけどそういう歴史も含めてアルバム再現公演が見られるのも、プラがここまで続いてくれているからなんだよなぁ、という感慨でいっぱいになりました。
ラスト1曲、竜太朗さんが「ここが夢の島です」と告げて「夢の島」へ。
音源はドラムの入っていないアコースティック曲ですが、ここで演奏されたのはロックバージョンでした。
ちょっと物悲しい原曲とは全然違うこのアレンジ、凄く好きです。
プラは喪失感をモチーフとする曲が多いバンドですが、この曲はどちらかといえば喪失というよりも無力感とか、孤独感とか、そういうものを感じていました。
一人で前だけ見据えて歩き続けてきた人が、「夢の島」という寂しい場所にたどり着いてふと振り返ったら誰もいないことに気づいたときの心細さとか、そうまでして得たものが「これだけだった」と悟ったときの虚しさとか、この曲を聞くといつも私はそういう感情が浮かんできます。
でもこの日の夢の島は、やっぱりどこか物悲しいんですけど寂しい曲とは思いませんでした。
なんというか、1人じゃなくて4人で寂しい場所にたどり着いたのを見届けたような感じ。
去年のプラフィコ2幕ラストの「記憶行き」のようにアウトロをのびのびと演奏する4人がすごく楽しそうで、もう私たちのことは置き去りでいいからずっと4人でどこまでも歩き続けてほしいと思う。
彼らが自分達の音楽を作り続けてきた結末のひとつを見届けたような、ビターエンドのいい映画を見終わったような多幸感で満たされているうちに1幕が終わりました。
帰宅後、絶対どこかでこのアレンジ聞いたことがあったなと思いつつ頭捻っていたら、昔ファンクラブに入ったときに入会特典(だったはず)で裏cellの音源をもらったことを思い出しまして。すごく久しぶりに引っ張り出してきたCDを聞いたら確かに近いアレンジの夢の島が収録されていました。
でも今回のほうが絶対的によかったです。どこがとは具体的に説明できないのですが、熱量のような何かが確実にいい意味で違う。もちろん技術力も上がったのでしょうが、10年以上を経て今のメンバーが解釈した「夢の島」が、寂しさではなくバンドの熱を感じさせるもので本当によかったと思います。
マジでDVDリリースしてください(頼んだぞ)